米国の成人19名(うち7名は2型糖尿病を持つ)を対象に実施した無作為化試験2においては、1日28gのアーモンドを摂取した介入群において、摂取されるアーモンドと同量のカロリー、脂質、炭水化物(デンプンや砂糖など)を含む対照食を摂取した対照群と比較して、2型糖尿病患者の食後血糖値が30%低下したと報告されています。また、同じ研究者は、13名の2型糖尿病を持つ成人を対象に、アーモンドが血糖コントロールに及ぼす長期的な影響について調べました。参加者は、1日28gのアーモンド(週5日、12週間)を摂取する介入群と、同カロリーのチーズスナックを摂取する対照群に分けて調査を行ったところ、12週間後、アーモンドを摂取した介入群は、2型糖尿病を持つ人のヘモグロビンA1cが基準値から4%減少しました。研究規模が小さいことが本研究結果の限界であり、アーモンドを摂取することによる2型糖尿病患者の血糖値への影響についての理解をより深めるためには、より大規模な研究が有用であると思われます。
過体重・肥満のアジア系インド人成人を対象とした新しい研究iiでは、アーモンドを毎日12週間摂取し続けた介入群では、対照群と比較してインスリン感受性とインスリン抵抗性の改善(研究者は膵β細胞の機能改善メカニズムで説明しています)が見られ、将来的に2型糖尿病になるリスクの指標である経口体質指数が低下したと報告されています。アーモンド介入群では、体重、体格指数(BMI)、ウエスト周囲径がベースラインからわずかながら有意に減少しましたが、対照群との比較では有意な結果とはなりませんでした。総コレステロールについては、アーモンド介入群では、対照群と比較してベースラインから有意に減少しました。
研究者らは、この無作為化比較試験において、アジア系インド人の男女352名(25歳~65歳、BMIは23kg/m2以上)を対象に研究を行いました。今回の研究では、世界保健機関(WHO)西太平洋地域のBMIガイドラインを用い、23kg/m2以上を過体重、25kg/m2以上を肥満とし、中心性肥満、脂質異常症(コレステロールなどの血中脂質のバランスが崩れていること)、ならびに糖尿病、正常血圧および高血圧の家族歴を持ち、午前中に定期的にスナックを摂取している人を対象としました。
アーモンド介入群では、12週間後に、以下の効果が見られました。
- インスリン抵抗性とグルコース値の減少
- 総コレステロールとトリグリセリドの減少
- 体重、BMI、ウエスト周囲径の減少
本研究の限界は、過体重および肥満のアジア系インド人の成人のみを対象としていることにあります。
別の12週間にわたる研究iiiでは、2型糖尿病を持つ33名の成人中国人(台湾人)を対象に、コレステロールを下げる食事療法として、1日あたり60gのアーモンドを摂取してもらい、短期および長期の血糖コントロール、血中脂質、内皮機能、酸化ストレス、炎症に及ぼす影響について調査しました。その結果、血糖値のコントロールが良好な患者(基準値HbA1c≦8)において、アーモンドを摂取した介入群では、対照群と比較してHbA1cが3%、空腹時血糖値が5.9%低下したことが明らかになりました。これらの結果は、2型糖尿病を上手に管理できている人(基準値HbA1c≦8)に関しては、健康的な食事にアーモンドを加えることで、長期的な血糖値の改善につながる可能性があることを示唆しています。血清コレステロール値および炎症と酸化ストレスのバイオマーカーに関しては、試験期間中、変化は見られませんでした。前回の研究と同様に、サンプルサイズが比較的小さいことが本研究の限界であり、アーモンドを摂取することによる2型糖尿病患者の血糖値への影響についての理解をより深めるためには、より大規模な研究が有用であると思われます。
アーモンドと糖尿病予備軍
また、健康的な食生活の一環としてアーモンドを摂取することは、糖尿病予備軍の人々にとっても有益である可能性があることを示唆する研究もあります。食事による糖尿病予備軍の回復は、「医療の聖杯」と呼ばれています。最近の2つの研究では、主要な食事の前に手のひら一杯のアーモンド(約20g)を摂取することがいかに血糖値コントロールの改善につながるかについて調査しています。
糖尿病予備軍で過体重・肥満のアジア系インド人を対象に、3日間の短期的な研究ivと、3カ月間の長期的な研究vを実施したところ、両研究でアーモンドの摂取が血糖値コントロールを改善させることが示されました。過体重および肥満のアジア系インド人の成人を対象に行われ、血糖値コントロールが改善することが示唆されました。3ヶ月間接種したグループは、被験者のほぼ4分の1(23.3%)で糖尿病予備軍(耐糖能異常)の血糖値レベルが正常に戻ることが示される画期的な研究結果が得られました。
この3ヵ月間の研究では、被験者をアーモンド介入群と対照群のいずれかに無作為に割り付け、食事と運動のカウンセリング、家庭用グルコメーターによるグルコース値の測定を行い、食事量や運動量を記録してもらいました。
体重、ウエスト、ヒップ、腕の周囲径、体脂肪の推定値、および生化学的測定では、インスリン、血糖値、ヘモグロビンA1c、Cペプチド、グルカゴン、プロインスリン、高感度C反応性タンパク質、腫瘍壊死因子α、脂質を測定してもらいました。
朝食、昼食、夕食の前に20gのアーモンドを3ヶ月間摂取した結果、介入群では対照群と比較して、初めて、以下のような統計的に有意な減少が見られました。
- 体重、肥満度、ウエスト周囲径、肩と腰の皮下脂肪率、握力の改善
- HDL-コレステロールの維持、および空腹時血糖値、食後インスリン、ヘモグロビンA1c、プロインスリン、総コレステロール、LDL-コレステロール、超低密度リポ蛋白質の改善
このような代謝の大幅な改善により、糖尿病予備軍の被験者の約4分の1(23.3%)で、試験後に血糖値コントロールが正常に戻りました。これらの知見は、糖尿病の高い有病率、糖尿病予備軍から糖尿病への高い移行率という問題を考えると、世界の公衆衛生にとって有意義であり、特に、経済的な不均衡の影響を受けている、糖尿病予備軍から糖尿病に移行する傾向が強いインドにいるアジア系インド人にとても重要な意味を持ちます。本研究の限界として、サンプル数が比較的少ないこと、介入期間が限られていることが挙げられます。本研究は、血糖値を良好にコントロールしていた糖尿病予備軍であるアジア系インド人を対象としており、2型糖尿病の患者において、食前のアーモンドの摂取によって受ける影響が同じになるかは推定できないと指摘しています。
このクロスオーバー比較試験では、60名のアジア系インド人を対象に、第一の試験期間では20gのアーモンドを摂取した後に、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を実施し、第二の試験期間ではアーモンドを摂取せずに、OGTTを実施するという2つの条件で試験を行いました。OGTT終了後、60名の被験者は3日間の試験に2回参加し、再び同じ条件(アーモンドを摂取して試験した後にアーモンドを摂取しないで試験、またはアーモンドを摂取しないで試験した後にアーモンドを摂取して試験)で試験を受けました。研究者らは、持続血糖測定システム(CGMS)を用いて、60名の被験者を対象に、3日間、1日3食(朝食、昼食、夕食)の前に20gのアーモンドを摂取するアーモンド介入群と、対照群の間で血糖値の影響を比較検討しました
その結果、介入群では、対照群と比較して血糖値、血清インスリン、グルカゴン、Cペプチドなどの高血糖の指標(OGTTの結果のみ)が低下することが示されました。アーモンド介入群では、食後血糖値(PPBG)が18.05%低下し、血糖値反応性の改善が示されました。
CGMSの結果、アーモンド介入群では、対照群と比較して最初の24時間のグルコース変動が統計的に有意に改善し、適切な血糖値コントロールが行われていることが示されました。特に、PPHG値に関しては、アーモンド介入群では、対称群と比較して10.07%低下しました。「プレローディング(食前摂取)」を採用することで、アーモンド介入群では、対照群と比較して日々の血糖値コントロールを反映するいくつかの指標で有意な改善が見られました。本研究の限界としては、糖尿病予備軍のサンプル数が少なく、介入期間も限られていることが挙げられます。また、栄養介入研究は、被験者の募集過程でリスクを認識させ、試験前に食事指導を行うため、両群で行動変容を引き起こす可能性があります。アーモンドの摂取をより広範に推奨するためには、異なる民族、および2型糖尿病患者と正常体重の個人において、アーモンドの食前摂取が同じ指標に及ぼす影響を調査する、さらなる研究が必要です。