心血管疾患(CVD)は毎年1,790万人の命を奪い、全世界の死因の32% を占め、またイタリアでも年間23万人以上が死亡している、世界的にもイタリアにおいても死因第1位の疾患です。日本でも、心疾患の年間死亡者数は20万人以上(注1)と言われており、悪性新生物(腫瘍)に次ぐ死因第2位(注2)とされています。
(注1) https://seikatsusyukanbyo.com/statistics/disease/myocardial-infarction/
(注2) https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai20/dl/gaikyouR2.pdf
管理栄養士のアンバー・モレリ(Ambra Morelli)氏は、「世界ハートの日」を迎えるにあたり、以下のように述べています。「毎年9月29日の『世界ハートの日』は、この病気には予防策があることを思い出させてくれます。喫煙や食生活の乱れ、運動不足などの生活習慣の危険因子を抑えることで、早死者の80%を回避できる可能性があります。ほんの少し目標を変えるだけで、大きな違いが生まれるのです。」
世界最大のアーモンド生産地である米国カリフォルニア州の約7,600のアーモンド生産農家ならびに100を超える製造加工業者で組織される「カリフォルニア・アーモンド協会」(本拠地:米国カリフォルニア州モデスト)は、「世界ハートの日」に、アーモンド摂取が心臓の健康にどのように貢献するかについて発表しました。
スナック(間食)としてアーモンドを摂取することから始める
心臓の健康を、毎日スマートにケアする方法の一つとして、適切なスナックの摂取が挙げられます。カリッとしておいしいアーモンドは、心臓の健康に効果があると言われていることから、ぜひスナックとして取り入れましょう。一握りのアーモンド(30gまたは約23粒)には、食物繊維(4g)、マグネシウム(81mg)、カリウム(220mg)といった心臓に良いいくつかの栄養素のほか、ビタミンE (7.7g)が豊富に含まれています。
ある研究では、コレステロールを下げる食事療法の一環として、高炭水化物スナックの代わりに同じカロリーのアーモンドを摂取することで、HDL(善玉)コレステロールが増加し、体内の有害コレステロールを除去する能力が向上することが分かっています。
適切な脂肪を摂取する
ダイエットを始めるとき、多くの人は脂質を減らすべきと考える傾向があります。しかし、脂質は私たちの細胞膜の構造成分であり、エネルギー源でもあります。食事に取り入れるべき脂質には、飽和脂肪酸のように制限すべき脂質もあれば、摂取が推奨される脂質も存在します。オリーブオイル、アボカド、脂の乗った魚、ナッツ、ゴマなどに含まれる不飽和脂肪酸を多く含む食事は、心臓病のリスクを低減する効果があると言われています。
1日のアーモンド摂取目安量として推奨される30gのアーモンドにはには、15gの脂質が含まれていますが、そのうち14gは不飽和脂肪酸(良質な脂質)です。そのため、アーモンドは毎日の健康的な食事に貢献する貴重な食材です。さらにアーモンドには、血中コレステロール値を正常に保つのに役立つリノール酸という脂肪酸も含まれています。
ストレスを軽減する
健康的な食生活を心がけるだけでなく、精神的なストレスにも気を配ることが大切です。精神的ストレスは、心血管疾患のリスクを高めると考えられている心理社会的要因の1つです。多くの人は、ストレスを抑えるためにさまざまなリラクゼーション法を用いていますが、食事もストレス解消に役立つ可能性があることが明らかになっています。
最近の研究で、精神的ストレスを抱える参加者を対象に、6週間にわたって典型的なスナック菓子の代わりにアーモンドを摂取してもらったところ、心拍変動(HRV)の測定値が改善したことが確認されました 。心拍変動は、ストレスに対する心血管系の反応を示す重要な指標です。心拍変動が大きいほど、環境的・心理的課題に対する心臓の適応性が高いことを示し、一方、心拍変動が小さいと心血管疾患や心臓突然死の確率が高くなります。
アーモンドの摂取と心臓の健康:研究結果の概要
何十年もの間、研究者たちは、アーモンドの摂取が、健康な心臓にとって重要である正常なコレステロール値の維持に貢献する効果から、その他の多くの側面に至るまで、どのように心臓の健康に役立つかについて調査してきました。最近発表された研究では、アーモンドを間食として摂取することで、血管の健康の重要な指標である内皮機能が改善したことが分かりました。さらに、典型的なスナック菓子の代わりにアーモンドを摂取することで、LDL(悪玉)コレステロールの低下が確認され、これまでの研究と一致していることが明らかになっています。
実際、システマティック・レビューとメタアナリシスにより、アーモンドを摂取すると総コレステロール、LDL(悪玉)コレステロール、トリグリセリドが有意に低下する一方、HDL(善玉)コレステロール値には大きな影響を与えないことが分かっています。
一握りのアーモンド(30g)なら、簡単に、そしておいしく摂取することができ、しかも1日中エネルギーを補給することができます。アーモンドについてのより詳しい情報は、Almonds.com(英語)を参照ください。
1 WHO - https://www.who.int/en/news-room/fact-sheets/detail/cardiovascular-diseases-(cvds)
2 Siprec - Società Italiana per la Prevenzione Cardiovascolare (イタリア心血管系予防学会)
3 WHO - https://www.who.int/europe/health-topics/cancer/cardiovascular-diseases#tab=tab_1
4 アーモンドは100gあたりで12gのリノール酸を摂取することができます。1日に10gのリノール酸を摂取することで、有益な効果が得られます。
5 一握りのアーモンド(28g)で、抗酸化物質ビタミンEの1日の推奨量の60%を摂取することができます。
6 「コレステロール低下食にアーモンドを含めると、LDLコレステロールの高い正常体重者の血漿HDLサブクラスと血清へのコレステロール流出が改善された」Berryman CE、Fleming JA、Kris-Etherton PM。The Journal of Nutrition、2017年、147(8): 517-1523
7 正常な血中コレステロール値の維持は心臓の健康にとって重要であり、リノール酸を1日10g摂取することで、有益な効果を得られます。アーモンドには100gあたり12gのリノール酸が含まれます。
8 「6週間にわたるホールアーモンドの間食により、健康な成人において、精神的ストレス時の心拍変動が増加した」。無作為化比較試験。Dikariyanto V, Smith L, Chowienczyk PJ, Berry SEE, Hall WL. Nutrients。2020年、12(6):1828。doi:10.3390/nu12061828
9 「6週間にわたるホールアーモンドの間食により、健康な成人において、内皮機能が改善し、LDLコレステロールが低下した一方、肝臓脂肪および他の心血管リスク因子には影響を与えなかった」。ATTISの研究、ランダム化比較試験。Vita Dikariyanto、Leanne Smith、Lucy Francis、May Robertson、Eslem Kusaslan、Molly O'Callaghan-Latham、Camille Palanche、Maria D'Annibale、Dimitra Christodoulou、Nicolas Basty、Brandon Whitcher、Haris Shuaib、Geoffrey Charles-Edwards、Philip J Chowienczyk、Peter R Ellis、Sarah E E Berry、Wendy L Hall。The American Journal of Clinical Nutrition、nqaa100、https://doi. org/10.1093/ajcn/nqaa100
10 「アーモンド摂取の空腹時血中脂質レベルへの影響」無作為化対照試験のシステマティック・レビューとメタアナリシス。Musa-Veloso K、Paulionis L、Poon T、Lee HL。Journal of Nutritional Science、2016; 5(e34):1-15