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毎日のアーモンド摂取が、心血管疾患予防における優れた費用対効果を示唆

カリフォルニア・アーモンド協会の出資により、タフツ大学がアメリカ人を対象として実施した最近の研究によると、毎日1.5オンス(42.5g)のアーモンドを摂取すると、摂取しない場合よりも心血管疾患に関連する医療費を削減できる可能性があることが分かりました。

2020/6/9

毎日のアーモンド摂取が、心血管疾患予防における優れた費用対効果を示唆

※このプレスリリースは2020年5月8日に米国カリフォルニア州で発表された資料の抄訳版です。

世界最大のアーモンド生産地である米国カリフォルニア州のアーモンド農家・加工業者で組織されるカリフォルニア・アーモンド協会(本拠地:米国カリフォルニア州モデスト)の出資を受け、タフツ大学がアメリカ人を対象として実施した最近の研究によると、毎日1.5オンス(42.5g)のアーモンドを摂取すると、摂取しない場合よりも心血管疾患に関連する医療費を削減できる可能性があることが分かりました1。

世界保健機関(WHO)によると、心血管疾患(CVD)は世界の死因第1位です。毎年約1,800万人の命が奪われ2、米国も例外ではありません。また、CVDは治療費が高額で、大きな経済的負担になります。たとえば、米国では2014年から2015年の推定される直接的な治療費は2,130億ドル(23兆400万円)を超え、2035年までには、すべての年齢層で治療費が増加することが予測されています3。2003年に米国食品医薬品局(FDA)は、「証明されていないものの、飽和脂肪酸とコレステロールの少ない食事とともにアーモンドなどのナッツを1.5オンス(42.5g)食べると、心臓病のリスクが低下する可能性があることが科学的エビデンスによって示唆されている」という医療専門家の主張に同意を示しています。実際、アーモンドの定期的な摂取はCVDのリスク要因として認識されている低密度リポタンパク質(LDL 「悪玉」)コレステロールレベルの低下に役立つ可能性が複数の研究で示されています。

この研究の目的は、短期的な基準分析(base-case analysis)と10年間のリスク予防分析の両方を使用して、アメリカ人のLDLコレステロールレベルの変化から、冠状動脈性心疾患の予防におけるアーモンド摂取の費用対効果を推定することにありました。研究者は、1日1.5オンス(42.5g)のアーモンドを摂取した場合と、摂取しない場合の関係性を評価するモデルを開発しました。CVDのパラメータには、2012年の米国人口における、LDLレベルの増加、急性心筋梗塞(MI、心臓発作)の発症、MI関連の手術およびその疾患と手術による死亡の可能性、疾患と治療の費用が含まれます。この研究で使用したアーモンドの費用もモデルに組み込まれ、その費用は2012年の米国市場での価格に基づいています。

この研究の基準モデルである2型糖尿病のリスクが高い150名のアメリカ人成人においては、1日あたり1.5オンス(42.5g)のアーモンドを摂取すると、摂取しない場合と比較して年間363ドル(3万9,000円)の費用を節約できることが示されました。アーモンドを摂取した場合では、LDLコレステロール、総コレステロール、体重、アポリポタンパク質B(ApoB:有害なLDLコレステロールに含まれる主要タンパク質)などのCVDのリスク要因が減少しました。また、これらのパラメーターが改善された結果、CVDの治療にかかる平均医療費が減少しました。

期間を10年に拡大した場合でも、類似した研究結果のパターンが見られました。質調整生存年(QALY:生存年数と生活の質(QOL)を考慮した指標)については、アーモンドを摂取しなかった場合、CVDの予防にかかる費用は2,566ドル(27万7,000円)であるのに対し、摂取した場合はわずか1,806ドル(19万5,000円)で760ドル(8万2,000円)も削減されました。

これらの分析に基づいて、1日に1.5オンス(42.5g)のアーモンドを摂取することは、短期的なCVDの予防では費用対効果に優れた戦略であり、10年間の場合も優れた費用対効果が示される可能性があると研究者は結論づけました。
研究の概要

方法

アメリカ人を対象に、1日1.5オンス(42.5g)のアーモンドを摂取した場合としない場合の心血管疾患(CVD)について比較しました。モデルのパラメーターは文献から導き出され、LDLコレステロールの増加、急性心筋梗塞と脳卒中の発症、心筋梗塞の治療およびその疾患と手術による死亡の可能性、米国での疾患と治療の費用、質調整生存年が含まれています。反応度分析は、医療費に対する支払い意欲の違い、確率的感度分析、10年間のリスク防止、治療とアーモンドの異なる費用、心血管疾患のある患者とない患者について実施されました。この研究の目的は、CVD一次予防におけるアーモンド摂取の費用対効果を調査することにありました。

結果

基準モデルでアーモンドを摂取した場合、摂取しなかった場合と比較して費用は363ドル(3万9,000円)減少し、質調整生存年は0.02増加しました。年間の医療費に対する支払い意欲の閾値を5万ドル(540万円)に設定すると、年間の純金銭便益は、アーモンドを摂取した方が1人あたり1,421ドル(15万3,000円)高くなりました。すべての感度分析において、CVDの予防についてはアーモンドを摂取した方が費用効果が高いという結果になりました。

本研究の限界

この研究には、利用可能なデータの不足という主な制約のほかにも、複数の制限がありました。総コレステロール/HDLの比率の方がより適切な指標である可能性がありながら、CVDのリスクのメディエーターとしてLDLコレステロールが使用されました。ただし、研究の著者からはLDL-C反応のデータしか取得できないという事情がありました。また、米国には多様な健康保険のオプションがあるため、研究者はCVD治療の平均保険料、控除額、費用をまとめることができず、代わりに各治療の平均費用が使用されました。そのため、結果と結論は無保険者についてのみに制限されます。その他の研究の制限には、研究対象の米国人は2型糖尿病のリスクが高く、治療費が発生していたこと、また米国で実施した研究によって疾病を発症する可能性があったことが含まれます。そのため、結果は他国に対して一般化できない可能性があります。また、結果の解釈には注意が必要です。調査結果は介入コホートからの一次データではなく、公開された文献からの情報に基づいていたため、データは文献の研究デザイン、特に可能性による制約がありました。長期的なアーモンドの費用と治療を推定するにはより多くのデータが必要になります。

結論

1日に1.5オンス(42.5g)のアーモンドを摂取することは、短期的な心血管疾患の予防への費用対効果に優れたアプローチであり、長期的にも優れたアプローチになる可能性があります。

1 Wang J, Lee Bravati MA, Johnson EJ, Raman G.「Daily almond consumption in cardiovascular disease prevention via LDL-C change in the US population: a cost-effectiveness analysis」 BMC Public Health. 2020 20:558.
https://doi.org/10.1186/s12889-020-08642-4
2 World Health Organization. Cardiovascular Diseases.
https://www.who.int/health-topics/cardiovascular-diseases/#tab=tab_1
3 Benjamin EJ, Muntner P, Alonso A. Bittencourt CS, Callaway CW, Carson AP et al. Heart disease and stroke statistics – 2019 update: a report from the American Heart Association. Circulation. 2019:139(10); e56-e58.
https://www.ahajournals.org/doi/full/10.1161/CIR.0000000000000659

本文に記載の金額は、1ドル=108円で換算しています。

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